妖怪うぃき的妖怪図鑑

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五徳猫(ごとくねこ)

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『百器徒然袋』より「五徳猫」

「七とくの舞をふたつわすれて、五徳の官者と言ひしためしもあれば、この猫もいかなることをか忘れけんと、夢の中におもひぬ」

 

五徳猫は、囲炉裏を囲い、火吹き竹でふぅふぅしてるカワイイ猫の妖怪。肝心の五徳は頭の上に載ってて意味なし。

しかしこれは解説文にもあるように、「七徳の舞」の内、二つを忘れてしまったことから「五徳の冠者」と呼ばれるようになってしまった信濃前司行長(しなのぜんじゆきなが)が例として出ており、石燕は最後に「この猫もよく忘れるんですよねぇ」と書いて結んでいる。

なるほど、本当は囲炉裏に置かなきゃいけない筈の五徳を頭に載せちゃってるのもそのせいか。

 

尚、その例に出てくる「五徳の冠者」は徒然草第226段に記載がある。

徒然草第226段

後鳥羽院の御時、信濃前司行長稽古の譽ありけるが、樂府の御論議の番に召されて、七徳の舞を二つ忘れたりければ、五徳の冠者と異名をつきにけるを、心憂き事にして、學問をすてて遁世したりけるを、慈鎭和尚、一藝ある者をば下部までも召しおきて、不便にせさせ給ひければ、この信濃入道を扶持し給ひけり。

この行長入道、平家物語を作りて、生佛(しょうぶつ)といひける盲目に教へて語らせけり。さて、山門のことを、殊にゆゝしく書けり。九郎判官の事は委しく知りて書き載せたり。蒲冠者の事は、能く知らざりけるにや、多くの事どもを記しもらせり。武士の事・弓馬のわざは、生佛、東國のものにて、武士に問ひ聞きて書かせけり。かの生佛がうまれつきの聲を、今の琵琶法師は學びたるなり

 

ちゃっかし後半には信濃前司行長が平家物語の作者であることが書かれていたりするが、前半はなかなかお茶目で苦労人な印象。

しかし五徳の冠者という異名をそのまま五徳冠した妖怪にしちゃった石燕先生の発想は流石である。

 

因みに、恐らく元ネタとなっているであろう妖怪が、百鬼夜行絵巻に描かれているので合せてチェックしてみてほしい。



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