古庫裏婆(こくりばばあ)
『今昔百鬼拾遺』より「古庫裏婆」
僧の妻を梵嫂といへるよし、輟耕録に見えたり
ある山寺に七代以前の住持の愛せし梵嫂その寺の庫裏にすみゐて、檀越の米銭をかすめ、新死の屍の皮をはぎて餌食とせしとぞ
三途川の奪衣婆よりもおそろしおそろし
婆、が付く妖怪は大体怖い……というのが解って来たらあなたも立派な妖怪通!
この古庫裏婆も然り。
石燕も解説文にて、「三途の川の奪衣婆よりこえぇよ」と書く程である。
古庫裏婆は、かつてはとある寺の住職の良き嫁であった。しかし住職の死んだ後、その寺の庫裏に隠れ住むようになり、檀家の供える小銭や食べ物を盗んだり、死体を掘り起こして皮を剥ぎ食らったりするのだという。
余程亡き夫を愛していたのか、先立たれた悲しみが嫁を恐ろしい古庫裏婆に変えてしまったのかもしれない。
なぜかはわからないが、婆の妖怪というのはまともな女性だったのが気が触れて鬼婆みたくなっちゃうパターンが多い気がする。
女心と秋の空。女心と昨今の春の雨。
多少気難しい女性なら我慢しようがあるが、人を食う程になってしまっては千年の恋も冷めてしまう。
耐えよ世の男子諸君。愛するハニーが婆妖怪の末路を辿らぬよう、尽くすのだ!
やれやれ。