羅城門鬼(らじょうもんのおに)
『今昔百鬼拾遺』より「羅城門鬼」
都良香らせうもんを過て一句を吟じて曰、気霽風梳新柳髪と
その時鬼神一句をつぎていはく、氷消波洗旧苔鬚と
渡辺綱がために腕をきられ、からきめ見たるもこの鬼神にや
平安京の正門である羅城門(羅生門とも)に巣食っていたとされる鬼の妖怪。
この鬼が登場する話は、酒呑童子討伐に加わった渡辺綱(わたなべのつな)の逸話で、一条戻り橋と羅生門の2パターンが存在し、そのうちの羅生門バージョンがこの鬼。
両バージョンに共通しているのは、渡辺綱と鬼が対決し、鬼は綱に腕を切られてしまうーーという件。それの対決場所が一条戻橋と羅生門とで分かれている。
ただ、時系列は異なっていて、一条戻橋は酒呑童子討伐前、羅生門は酒呑童子討伐後となっている。
これは謡曲などで創作された逸話が混同したものであり、羅生門バージョンの方が後から作られたと思われる為、オリジナルは一条戻り橋ということになる。
また、一条戻り橋の鬼は酒呑童子の配下である「茨木童子」だが、これらのややこしい混同によって羅生門の鬼もよく茨木童子と同一視されるらしい。ほんとは別の鬼。
因みに↑画像の鳥山石燕の「羅城門鬼」の解説文には、
――後、渡辺綱がために腕をきられ、からきめ見たるもこの鬼神にや。
と書いてあることから、謡曲『羅生門』をベースにした話を元に描いたものと思われる。
あーもうなんかややこしいですが、そうやって複雑に育まれていくのが妖怪の面白味でもあると思います。