さぁさぁ皆さんお立合い! 「蝦蟇」(がま)
蝦蟇
葛飾北斎「岩とおもひて怪物の頭に釣をたるゝ」
ガマの油でも有名な蝦蟇(正式にはニホンヒキガエル)。
面白いことに、どの時代から蝦蟇(がま)という呼称が定着したのかは明らかでは無い。古くからヒキガエルを蟾蜍(ひきがえる)、または蟾(ひき)と呼んでもいたので、元々蝦蟇は別のカエルを指していたのでは? と言われている。
そんな蝦蟇が最も活躍したのが、江戸時代の香具師達による「ガマの油売り」であった。
蝦蟇から取れた(それも四六のガマという霊験あらたかな特別な蝦蟇からしか取れない油と謳った)と称した油を、傷に効くだのなんだのと巧みな口上で売り飛ばす商売で、大いに流行ったらしい。これは落語にもなり、多くのバリエーションがある。
因みに本当に蝦蟇から取った油を売っていたのではなく、植物のガマの油を売っていたようだ。今それをやったら詐欺だ偽装だと大問題になるのだろうが、江戸時代の香具師の上手いところはわざわざ植物のガマを使っているところで、確かにガマの油として売っていることに嘘は無い。カエルの蝦蟇と一度も言わなければ、詐欺にもならない。江戸の香具師は伊達じゃねぇ!
蝦蟇が妖怪視されるようになったのは諸説あるが、僕は特に「目」が重要だと思っている。カエルのあの「全てを見透かしているかのような」半開きの目は、ただ不気味なだけでなくちょっと敬いたくなる。あとはイボ。↑で使用した北斎の絵は、大蝦蟇の上にいることに気付かずに釣りを続けてしまった逸話を絵にしたもので、岩と間違えて釣りを続けていた男が描かれている。
そういえば随分前に紹介した周防の大蝦蟇。あれは巨大であるだけでなく槍も持っているエヴァンガマヲンで、ちょっと飛び過ぎていた。
尚、蝦蟇に乗った忍者、自来也の名も有名かと思う。が、自来也が物語などに描かれ流行ったのは江戸時代ももう少し後のこと。ガマの油があってこその自来也登場なのだ。
因みに、実際の蝦蟇の油は毒薬指定(?)されていて、トリップ効果とかがあるらしい。それを利用した呪術もあったようで、自来也とまではいかなくてもそのような事は出来たのかも知れない。
ところで、僕は幼い頃にカエルの肉を食べた記憶がある。うえぇ、と思っていたものの、食べたら鶏肉に似た味でとても美味しかったのを覚えている。
大蝦蟇なんかは食べたら絶対美味しいと思う。