風呂上りなので『月百姿』より「垣間見の月 かほよ」
『月百姿』より「垣間見の月 かほよ」
丁度今風呂を出て、『月百姿』の絵でも貼ろうかと思っていたのでコレ。
――なんて気楽に記事を書き始めたものの、なんだよこれシンプルな覗き絵だと思ったら忠臣蔵が絡んできちゃうじゃないか! もうそんな体力は残ってry……な気分の今現在。
まず、風呂上りの「かほよ御前」を覗いているスケベオヤジは高師直(こうのもろなお)さん。高師直という人物は鎌倉時代から南北朝時代にかけて実在した人物であり、太平記にも出てくる。
しかしこの絵の元になっている「仮名手本忠臣蔵」は鎌倉時代の話ではない。
実はこれ、前にも何かの記事で書いたと思うが、歌舞伎や浄瑠璃などは近い時代に起きた史実や、幕府批判に繋がるような史実をそのまま演目とすることは禁止されていた。
そこで、実際に起きた事件である「元禄赤穂事件(げんろくあこうじけん)」の内容を、登場人物などを太平記などに置き換えて「仮名手本忠臣蔵」という演目に仕立て上げたのである。
その為、両方を細かく書いていくと妖怪の「よ」の字も出てこないそれこそ脱線脱藩アウトロー街道バクシンチュウですけど何か? ……な感じになってしまうので避ける。
しかし一応、「仮名手本忠臣蔵」の超おおまかで適当なあらすじだけは書いておくので参考に。
(尚、時代劇などえ有名な忠臣蔵の方が赤穂事件を元にカッコヨク脚色していて、ここで書く仮名手本の方は歌舞伎などで演じられたものなのでそういう色恋が強引に入ってる感が強いです)
――江戸時代。
鶴岡八幡宮にて、高師直が塩谷判官(えんやはんがん)の妻、かほよに一目惚れ→
かほよ、「ごめん無理だから」という歌を詠む→
師直、ブチギレて、江戸城で塩冶判官と会った時にめたくそに罵倒する→
今度は判官がキレて、城内で師直を斬り殺そうとする→
殿中で刀を抜いてはいけない、というルールがあったので、判官その場で切腹。なぜか師直はお咎めなし→
切腹の場に駆け付けた判官の家臣、由良之助は主人の仇討を誓う
→師直邸に忍び込んで由良之助、見事師直を殺し、仇討達成→
完。
※史実忠臣蔵だと、大石内蔵助=大星由良之助。浅野内匠頭=塩谷判官。吉良上野介=高師直。
――とにかく、全ての発端は人妻を口説こうとした高師直にあり、どう考えても師直が悪い。勧善懲悪!!
芳年が描いた『垣間見の月』では、なんともいえない顔の師直が、どう考えてもバレるだろ、という正面からかほよを覗き見ており、更にそんな間抜けな様子を嗤うかのように月が見ている――という絵になっていて面白い。
風呂上り、いい気持ちだからと油断しているとどんな災難に遭うかわからない。
今日は早く横になろうと思っていたのに、迂闊に選んだ『月百姿』のこの絵で、もう一時間近く調べものをする羽目になった僕のように。
師直絶対許さない。でもかほよたんの裸体見れたからまぁいっか♪