月岡芳年『月百姿(つきひゃくし)』
『月百姿』とは?
名前に「月」を冠する月岡芳年。
そんな芳年が激動の幕末を経て明治に入ってから、浮世絵の有り方そのものを自身に問いかけながら完成させたと言われる『月百姿』。
1885年から1892年の七年間に渡り百枚もの「月」を入れ込んだ連作を描いた。
同じく晩年の作品である『新形三十六怪撰』と制作時期が被っており、『新形三十六怪撰』に見られる芳年の苦悩とは対照的に、美しい月を中心に様々な英雄、古事、怪異、妖怪を描いたこの作品は芳年の「美しい心」の部分を描き出したもの、とも捉えることができる。
稲葉山の月
――妖怪図鑑であることから、怪異や妖怪とは関係の無い絵も多いこの作品は紹介するのをためらっていた。しかし『新形三十六怪撰』や『和漢百物語』を紹介させてもらい思い入れも強い。
そして「無残絵の芳年」などと言われている芳年の、そういう部分以外の本当にかっこいい絵を描く芳年をもっと紹介したいという想いもある。
そこで、妖怪調べに疲れて、あるいは憑かれてしまった場合に尋ねる場所、憑き物落としならぬ「月物落とし」のコーナーとして『月百姿』の全紹介を目指すことにした。
疲れたり憑かれた時には、月を見上げてみて欲しい。