赤柱(あかばしら)
ビビビの鼠様提供
過去に置き去り、忘れようとしていたものが突如現代人に牙を剥く。これほど恐ろしい事は無いであろう。それは人々の記憶を掘り起こさせ、怨みはどのようにしても決して消えることが無いと語りかける。
妖怪「赤柱」は、各地に残る「人柱伝説」と深く関わりを持つ妖怪である。
人柱とは、自然災害によって崩れることを防ぐためや、人の命を埋めることにより強度を増す、などのまじない的意味で実際に行われていたとされる「建造物に人を埋める」ものである。
あくまでも「伝説」であるのは、マイナスイメージを避けるべく隠蔽されるからに他ならない。
望んで人柱となった者もいるだろう。しかしその反面、多くの人間が不本意に埋められることとなった。そのような者達の怨念は決して消えることは無く、互いに寄り添い、建物の奥深くで大きな髑髏となっていった。
それは人柱の伝説の伝わる場所だけでなく、全く予期しなかった場所からも現れる。一度も噂されることのないほど、完璧に隠蔽した場所からも。
妖怪赤柱の目的はシンプルである。
自分を埋めた者達の子孫を根絶やしにすること。そして、新たな人柱を捕まえること。
――しかし多くの怨念の集合体となった赤柱にそのような事を考える理性は無かった。捕まえようにも頭蓋骨しかなく、巨大過ぎた赤柱は、ことごとく人間を捕まえるのではなくすり潰すことしかできなかった。
最初、真っ白な髑髏として恐れられていたのが、人間の血を浴びすぎていつしか真っ赤な髑髏へと変わっていた。そうして人柱伝説が残る場所に多く現れることから赤柱と呼ばれるようになったのだが、赤柱が成仏する術は最早無いのかもしれない。
地震だ、と感じる揺れがあった時、頭の片隅に赤柱の存在も置いておいて欲しい。それは未だに身代わりを探し求め、人を喰らっているのだから。