北斎式皿屋敷
『北斎漫画』より「菊女が霊・三日月上人」
番町皿屋敷におけるお菊と三日月上人のやりとりを描いたこの絵。
三度目なので、もうこれ以上ないぐらいに端折って皿屋敷の流れを書くと――
お菊という奉公娘が、奉公先で皿割っちゃって責められまくって自殺して夜な夜な幽霊になって現れるようになっちゃった
――話である。
さて、この皿屋敷伝説には様々なバリエーションがあるのだが、最も認知されているとされているのがこの三日月上人とお菊の幽霊のもの。
夜な夜な皿の枚数を数えるお菊ちゃんの幽霊に悩んでいた屋敷の主が、三日月上人にお経を読んで幽霊を追っ払ってくれと頼んだ。
いつも通りお菊ちゃんが皿の枚数を数え、いつも通り数え終わりの九枚までいったところで、上人は「十!」と叫んだ。
するとお菊ちゃんは喜び、もう現れることは無くなったのだという。
さてさて、そんな大人気のお菊ちゃんだが、北斎は『北斎漫画』以外にも皿屋敷を描いている。
『百物語』より「さらやしき」
こちらは実に斬新。
なんとお菊ちゃんの体が皿になっているのだ。
それでいて長く垂れた髪と色使いが不気味さを演出しており、のみならず表情とため息はどこかユーモラスにさえ見える。
今度こそ成仏してよねお菊ちゃん!