出世螺(しゅっせぼら)
『絵本百物語』より「出世螺」
出世螺は、法螺貝が長い年月を経て(山に三千年、里に三千年、海に三千年)龍になった妖怪。
山に法螺貝が住んでいて龍になるという伝説は各地に残っており、直近では明治時代にも崖崩れの後から龍が飛び出し、天へ昇って行ったのを見た、という事例があるという。
そもそも法螺貝は山に住んだりはしない筈(たぶん)だが、なぜこのような伝説が産まれたか考えてみると――
・法螺貝の美しい螺旋形状が龍を思い起こさせるから。
・ほら穴に住む法螺という言葉遊びから。
・ボラ(魚)は育つにつれて名前を変える出世魚であることから、洒落で。
・山伏が法螺貝を神聖視し、愛用していたことから、山と法螺貝が結びついた。
――などが考え付くが、実際はわからない。
因みに、山から龍が飛び出した、と出世螺の目撃談を周囲に話していた者が信じてもらえずウソツキ呼ばわりされたことが「ホラを吹く」の由来だとか。
とにかく、出世螺と聞いたら貝の妖怪だと思ってしまうが、龍であることが解ったと思うので、ぜひお友達に自慢してもらいたい。白い目で見られてもシラネ。