笑い般若(わらいはんにゃ)
葛飾北斎『百物語』より「笑い般若」
北斎が『百物語』内で描いた不気味な嗤う般若。
笑顔の般若が指差す先には子供の頭部が生々しい傷口を晒して握られている。
この笑い般若の絵は、しばし鬼子母神(きしもじん)と、鬼子母神が手に持つ吉祥果(きちじょうか。ただ鬼子母神が手にする果実は一般的にはザクロとされることが多い)の実と関係があるのではないかと言われる。
鬼子母神は元はハーリーティ(訶梨帝母)という名の夜叉であり、沢山の子供を持っていた。しかしハーリーティは度々他人の子供を攫っては喰らうという恐ろしいことをしていたため、お釈迦様が「こらしめてやろう」とハーリーティの末っ子を攫い、隠してしまった。
自らの子を隠され、発狂しそうになったハーリーティはようやく自分が他の子供達や親たちに与えていた苦しみに気付き、改心し、鬼子母神となる。
この笑い般若は、そんな鬼子母神が改心する前の、夜叉であった時の様子を描いたのではないだろうか。
尚、般若という言葉は仏教上「智慧」となる。しかし広義には「鬼女」の事を指す場合もあり、北斎のこの絵も「鬼女」というニュアンスだと思う。
けれども「笑い鬼女」としなかったのはやはり仏教云々が関係しているという意味を残しているに違いないと思えるので、鬼子母神説濃厚! ということになる。僕的に。