妖怪うぃき的妖怪図鑑

妖怪うぃきから産まれた妖怪図鑑ブログ。妖怪の原点に触れ、もっと魑魅魍魎を知るきっかけになれば幸いです。

『画図百鬼夜行』自力絵解き~震々編~

震々を絵解き

前回はおとろしの絵解きに挑戦しまして、おとろしの全くない絵解きになり、この企画やっぱりダメなんじゃねぇか、なんて初回から思ってしまった自らを戒め奮い立たせるためにも、今回は読者さんがくれたコメントの助力もあり、比較的「それっぽい」絵解きができそうな震々(ぶるぶる)にてなんとか汚名返上といきたいと思っております。

ではまず震々の絵から。コイツは『今昔画図続百鬼』に描かれている妖怪ですね。

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解説文には、

ぶるぶる又ぞゞ神とも臆病神ともいふ
人おそるゝ事あれば、身戦慄してぞつとする事あり、これ此神のゑりもとにつきし也

と書かれています。

ぞぞ神という別名、臆病神とも呼ばれること、何かオソロシイことがあってぞっとするのは、この神が襟元につくから、とも書かれています。

妖怪紹介の項では、クワがバラバラに落ちているから、「くわばらくわばら」ってことじゃないか、というコメントをいただきました。

確かに手前に落ちているのはクワだと思われるのですが、奥に落ちているのはよく見ると形が違いますね。

多分、スキでしょう。

クワとスキの違いなんて実物もよく知らないからわからんのですが、形違いますしちょっと調べたらわかりました。クワマンとマーシーの違いぐらいわかるのです。

奥には樹が描かれており、スキやクワを使ったのでしょうか、根っこから掘り起こされて倒れ掛かっています。

そして中央に描かれた妖怪震々は、まるで手招きをする幽霊のようにも見えます。

その名前の通り、線もどことなくブルブルとした感じに描かれています。

 

さて描かれているものをざっと書き出しましたが、妖しそうなポイントは沢山あります。

 

で。震々を紹介した時のコメント欄に、更なる識者が現れまして、

「樹は榊。手前にススキ。そしてクワとスキ。これすなわち地鎮祭なり」

と看破してくれました。

樹に縄を結んで掘り起こしてますし、地鎮祭に使うクワ、スキ、さらにススキがそろってますし、これが地鎮祭をしているシーンだという可能性は非常に高そうです。

その掘り起こしたあたりから飛び出てくる妖怪震々。

まぁ僕は素直に、「地鎮祭と地震を掛けたシャレなんじゃねぇか」と思うんですが、どうでしょう。震々ですし。

他には、あえて手前にススキがフィルターの如く描かれているのにも着目しました。

しかも震々自体がなんか幽霊みたいなので、これは「正体見たり枯れ尾花」ってことも暗に言ってるんじゃないか、なんて思うのです。ブルブルっと怖くなるのも結局は気のせいだよ、みたいな。

 

つまり。

この震々の絵には、

・地震と掛けた地鎮祭。

・くわばらくわばらなクワとスキがバラバラ。

・正体見たり枯れ尾花と言わんばかりの手前のススキ。

と、遊び心に溢れた妖怪画になっている、ということが言えるのではと思います。

 

うん、前回のおとろしに比べれば大分宜しい気がする。

 

『画図百鬼夜行』根性絵解き~おとろし編~

『画図百鬼夜行』を自力で絵解き

絵として描かれるようになった妖怪達の、その原点とも言われているのが鳥山石燕の描いた『画図百鬼夜行』なのは言うまでもありますまい。言ってるけど。

で、これまた知る人ぞ知っている、石燕がとても遊び心に溢れた翁であり、描いた絵には様々な洒落が込められておりそれを解くのも『画図百鬼夜行』を読む上での一つの愉しみとなっています。

 

さて、この絵解き、生半可な知識では到底できるものではありません。

そもそも江戸時代に描かれた『画図百鬼夜行』ですから、その当時の流行りだとかその当時読まれていたであろう書物にも精通していなけりゃできないわけです。

 が。

僕はご存知のように屁しかこけないヘタレ。さらに自慢だった屁も、今の恋人と出会いその立派で禍々しい凶悪な屁を目の当たりにし、「僕にはもう誇れるものなんて何もない」ぐらいに屁こんでしまいました。

けれども、絵解きすんのもどんな解釈すんのも自由なはず! そこに「正解」なんてないのではないでしょうか!

つーわけでマジで自力でネットとか本とか使ってそんなに頑張らずに絵解きしてみよう、と思った次第です。

本当はずっとやりたかったんですが、僕にとっては雲上人であられる、これまた知る人ぞ知る「多田克己」先生という妖怪博士様がいらっしゃいます。

この人は京極厨先生の『今昔続百鬼~雲~』とかにもタタラ先生として出てきたりするんですが、まぁ面白い人なのです。

一度だけ、京極村上多田のトリオのトークイベントで拝見しましたが、妙な癖のある、ほぼ小説で描かれている通りの人でした。

 

で、多田克己先生は『季刊 怪』つう妖怪マガジンにて絵解きをずっとやってらっしゃるようなのですが、悲しいことに僕が怪を購読するようになったのはつい最近のことで、バックナンバー一気買いするような余裕資金もありませんし、すげぇ読みたいのに読めないのです。

つまり、僕は多田先生の絵解きをほぼ知らない、ということをまず断っておきたいです。

全部まとめて本にしてくれたら即買うのになぁカドカワサン。

 

では、早速一回目の今回は、なんとなく謎が隠されてそうな「おとろし」で行きます。

あ、こんな感じで、すげぇ適当に選びます。謎ありそうなの限定で、『画図百鬼夜行』だけに限らず『百器徒然袋』まで、どっからでも選びます。

「それちげぇよ」とか、「多田さんはこう言ってたよ」とか、その他もろもろ何かあればコメントくれれば有り難いです。

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はい、おとろし。

こいつは、『画図百鬼夜行』の「風」の、わいらの次に描かれている妖怪です。

とにかく髪が長いですね。おどろおどろしいです。

そう、ぼっさぼさのおどろ髪が洒落として込められているのは間違いありません。というかそうwikiに書いてあります。妖怪うぃきなんだからwikiは参考にしますよ。

そういえば、京極堂シリーズの何かでおとろしのことに触れてた気がしますが、失念坊な僕はすっかりさっぱり失念しているので進めます。もしその京極堂シリーズで語られてた内容を僕がこの後書いたのなら、それは僕がとんでもない虚言少年か、あるいは無意識下で覚えていたんだろう、ぐらいに思っていただければ幸いです。

 

で。

おどろ髪よりもはるかに気になるのは前髪。

いや長すぎるだろ。

前髪を切りすぎたのがブームなこのご時世に逆に前髪伸ばしすぎたなんてやってるんですからほんとオソロシイですね。

ただ、この前髪、明らかに何かを言わんとしている感があります。よく見ると後頭部から出てる気もするから、もしかしたら前に来ちゃった後髪なのかも知れません。

あるいは尻尾だったり――しないかな。

 

そして、なぜかコイツは鳥居の上にいます。しかも、右手で鳥を鷲掴みにしています。

しかもしかも、掴まれている鳥は最高に嬉しそうな顔をしています。

いやなんでだよ。

あとは、後ろに見える樹。

こういう時ですよね、自分の無知を呪うのは。

判る人には判るんですかね? ああこれは〇〇〇の樹だな、とか。絶対意味あると思うんですが、何の樹なのか、日立のこのぉ樹なんの樹ばりにわからんのでスルーします。

あと、鳥もなんの鳥かということは当然重要なんでしょう。

ちょっと鳥画像見まくって来ます。

 

はい、帰還しました。

鳩かケリ(鳧)という鳥が候補にあがりましたが、より近いのはケリの方な気がしましたのでケリだとして進めます。

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上の画像がケリです。

ハッキリと尾の先と翼の先が黒いので、こいつかと予想しました。

 

次に鳥居の形について。これはいろいろ調べますと、笠木(鳥居の一番上の端っこの部分)が反っててかつ黒いので、明神系の鳥居であることがわかりました。

 

明神系鳥居の笠木を左手で掴み、ケリを右手で掴み、前髪をだらんと垂らしている。

……よぉし全くわからん!

 

ところで、ケリという鳥を漢字で書くと、おしまずき(几)の上に鳥が乗っています。

よく考えたら、鳥居って几の形に似ている気がします。

鳥居の上に鳥がいるので、もしかしたら鳧という漢字そのものを表している――とか。

しかもですね、右の方にある樹の幹だか枝だかの形も、几という漢字の形になっている気がしなくもないのです。

そして樹の真上はぽっかりと空白になっています。

 

そうか! これは読者が樹の上に「鳥」という漢字を書きこんで鳧という漢字を作って「ケリをつける」という洒落なのではないでしょうか!

 

ここまで興奮して書き進めましたが、ここで漸く気付いたオトロシイ事実。

その線で行くと――

 

おとろし全く関係ないよね!

 

なんてほろ酔い気分でおもひぬ。