月岡芳年『和漢百物語』とは?
月岡芳年『和漢百物語』
月岡芳年が二十代半ばにして描いた、日本や中国の伝説をモチーフにした浮世絵版画。
「血まみれ芳年」等の異名を得ることになる無残絵も有名だが、妖怪達と戦う英雄を描くのも得意だった芳年。
この妖怪図鑑でも全て紹介することのできた『新形三十六怪撰』と似たような趣向で、仲には同じ題材を扱っているものもあるが、『新形三十六怪撰』は芳年が神経衰弱を患い、亡くなる直前に描いたものであるのに対し(厳密には完成させることなく芳年は死去している。それを弟子達がなんとか完成させ、公開した)、この『和漢百物語』は芳年が有名になり始める時期のものなので、どことなく荒々しさが感じられて良い。
試しに最も構図の似ている、道成寺の鐘(これは石燕の描いた絵のタイトル)でも知られる清姫の『新形三十六怪撰』バージョンと『和漢百物語』バージョンを見比べてみましょう。
↑が、『新形三十六怪撰』の清姫。
↓が、『和漢百物語』の清姫。
表情もさることながら、『新形三十六怪撰』の方が全体的に美しく整えられている気がする。
一方の『和漢百物語』は、おどろおどろしさが色濃い。
このように、芳年の晩年と初期とを見比べて楽しむことが出来るのもこの『新形三十六怪撰』と『和漢百物語』だけなので、ぜひその辺りの違いも気にして見てみてほしい。
そろりそろりと紹介していく予定です。