つらら女に狙い撃ち
つらら女(つららおんな)
東北地方での話。
――とある引き籠り独身男が、連日降り続く雪と、そのせいで溶けることなく家の屋根にぶら下がっているつららを見ながら、「あ~。こんなつららみたいな美しい嫁が欲しいなぁ」とぼやいていた。
それで嫁が出来たらこの世に婚活なんてものは存在しないハズなのだが、昔話は昔の話であって今とは違う。
ある日、吹雪の中を一人の美女が訪ねてきた。
「すみませんが、旅の途中でこの吹雪に遭ってしまい、進もうにも退こうにもどうにもできなくなってしまいました。よければ一晩泊めてくれないでしょうか?」
これを断る男はいない。独身男はすぐに女を家へと招き入れ、あれこれと尽くしてやった。
数か月後。
旅の途中だったはずの女はなぜか男の家にいついており、男もまたそれを全く嫌がらなかった。二人は自然と心通わせ、結婚まですることに。
つららを愛でながらぼやいた一言が実現した。
男は幸せだった。
しかし春になった途端、買い物に出かけたはずの女が帰ってこなくなった。
男は毎日人に聞いて女を探したが結局見つからず、逃げられたのだ……と自分を納得させた。
心の傷も次第に癒えてきたころ、男は別の女性となんとか再婚することができ、新たな人生のスタートをしようとしていた。
そして迎えた冬。
あの、消えたはずの女がふいに男の家へと訪ねてきた。
男は混乱したが、腹をくくってしっかりと事情を説明した。
「俺は毎日お前のことを探したんだ。なんでだよ? なんでいきなり消えちまったんだよ? それで一年後にふらっと来られても……」
「人には事情があるのです。永遠の愛を誓ったのに……美しく伸びたつららのように固い絆だと云い合ったのに……。仕方ありませんね。でも……この世は私の為にある」
女はそう言うと、寂しそうに去って行った。
ただならぬ雰囲気を察して、家の中から男の妻が出てきて男に聞いた。
男は「なんでもない」とだけ言い、今年も出来てしまっている長く大きなつららを眺めた。
妻はしぶしぶ家の中へと戻って行ったが、突然玄関の方で大きな音がしたので踵を返して見に行った。
するとそこには、大きなつららに首を貫かれて息絶えている男の姿があった。
ツララで狙い撃ちッ!
というお話。山本某は無関係。
さて、このつらら女系の伝承は地域によって内容が異なっていて、「ただ女が溶けちゃっておしまい」パターンと、上記の話のように「男が死んでおしまい」パターンとに大別される。
小泉八雲の『雪女』に比べると美しさに欠ける展開な気もするが、同時にやはり大まかな流れが似ている。
「つらら」が持つ攻撃的なイメージが、つらら女独自の男を殺すパターンを産んだのかも知れない。
とにかく、雪の日にはつららを眺めて「嫁よ来い」とぼやいてみると良いかも知れない。雪・氷系妖怪は大体嫁に来てくれるパターンを踏襲しているので、出会い系サイトなんか見てるよりは夢がある。それで夢が叶うならお安い物だと思うbyウララの人
ただ――よく考えたらつららって見た事ないかも知れん。