見越を見越して絵解き
見越を頑張って絵解き
またまたコメント欄にてリクエストを頂いたので、期待を裏切らない(でいたい)僕なのでしっかり応えるべく今回は「見越」を絵解きしたいと思う。
見越、つまりは見越入道のことで、見上げればどんどん大きくなる系の妖怪であり、黄表紙でも人気キャラクターだったとかなんとか。
妖怪検定を一度でも受けたことがある方なら、その類似妖怪の多さに辟易した経験もあるだろう。
で、肝心の鳥山石燕の絵では、「見越(みこし)」という題で描かれている。
『画図百鬼夜行』の「風」の巻の最初の妖怪がコイツである。
絵を眺めてみると、特に何か遊び心が入っていそうな箇所は背後の樹しかない気がする。
というわけで、兎にも角にもこの樹がなんなのかを突き止めなければ話にならないのだろう。
この樹を探す上で大きなヒントになる(つうかそれしかヒントない)のが、変な形の実だろう。
詳しい人は見ただけでわかるのだろうか?
しかし僕はすさまじく苦戦している。
アケビとか、その辺を当たってみたのだが、絵に描かれているような二股の「ちょこん」がついていない。
二股のチョコンが付いている実……。まぁ知識に乏しい僕が頭を捻ったってわかるはずもないので、ひたすら樹の写真を探し続けること数分。
フェイジョア――と言うらしい。
画像で見つけて「お!」っとなって、名前を見て絶望した。
これではないと思う。前回(青坊主編)でこういう強引な解釈は排除するように心に決めたのだ。
で、しばらくして後、ふつうにヘチマに行き着いた。
ヘチマだろ絶対。
先端のチョコンがちょっと違うかな? とも思ったが、比較的未成熟な時期のヘチマの画像にはしっかりとちょこんと分かれたナニカがついているのを確認できた。
しかしヘチマは樹ではなく、ツル性の植物なので違うかな? とも思ったが、しっかり巻き付いたツルのようなものも描かれているので、ヘチマ説は濃厚である。
※追記
草鞋だ、との指摘を頂戴した。確かによく見ると履物状になっており、コメント欄に張ってくれたURLでも草鞋が確認できた。
というわけでヘチマ説を主体にして一気に書いたこの記事がかすんでしまったが、なぜ草鞋なのか? という点について自分では全く答えが出せなかったのでとりあえずこのままにしておく。
指摘をくれたみなさん、本当にありがとう。
では次に、ヘチマと見越がどう関係してんの?
という話だが、「見越 へちま」で検索してみたら意外とすぐに答えにたどり着くことができた。
どうやら、江戸時代に流行っていた見越入道の狂歌に、ヘチマを見越入道と見間違えた――みたいな内容のものがあったらしい。
確かに、見越の肌の質感と、乾燥したヘチマの感じは通ずるものがあるし、樹からぶらさがっていたらバケモンに見えないこともないだろう。
というより、見越をわざわざヘチマっぽく描いてるような気さえする。
加えて、鳥山石燕という人は狂歌師としての一面も持っていた人物なので、その狂歌を知らないはずもない。
つまり!
これは、その狂歌を元に石燕が見越と見越と見間違われるヘチマとを同時に描いた洒落なんじゃなかろうかと思われる。
と、もしかしてだけど、へちまを見越よりも上に描いたのは、見越入道に出遭ってしまった時の対処法、「みこした!」とか、「見抜いた!」と言えば済む――ということにも関係しているような気がするんだけど……。
実の下! 実抜いた!
とか。これはちょっと我ながら眉唾だけれど。