精霊風に吹かれて消えてゆくのさ
精霊風(しょうろうかぜ)
長崎県は五島では、盆の十六日の朝に魔風が吹く。
それに当たると病気になったり、倒れてしまうという。
その風は仏教語で死者の霊を表す「精霊(しょうろう)」と組み合わさり、精霊風と呼ばれている。
盆の十六日というのは「送り火」として死者の霊を送る日であり、その朝に吹く風には死者の魂がこもっていると考えられたのだろう。
全国で行われる行事に灯籠流しというものがあるが、精霊風の吹く長崎県では御存知精霊流しである。
さて、風は古来から邪をもたらすものと考えられることも多かった。
例えば、妖怪でも「風の神」なんていうのがいる。一説では風邪はそのまんま邪な病を風がもたらすから風邪と書くようになった、とも言う。
風邪ですら原因が解らなかった時代では、ちょうどお盆シーズンには夏風邪夏バテが起こりやすく、「あぁこりゃ精霊風に当たったに違いない」となるわけである。
お盆の終わりに去っていく死者の霊が吹かせるその風は、宗教的な意味を持つのと同時に、現代と同じように「夏風邪には気を付けて油断しないように!」という教訓も含まれていたのではないだろうか。
精霊風の吹く頃、人々は様々な想いで空を見上げる。
それは本格的な夏の訪れ。
それまでに何があったとしても、風は僕らの足跡を消し、また前へと進む追い風となる。
それではお聞きいただこう。猿岩石で、『白い雲のように』。
オチが強引でも風に吹かれてなかったことにすればいいのさ