オゴメ(おごめ)
オゴメ
水木プロも全面に押し出している可愛い容姿の妖怪、オゴメ。
三宅島に伝わっている妖怪で、高い木の上におり、赤ちゃんのような甲高い声を上げて嗤うのだという。通称「オゴメ笑い」。
このオゴメ、水木御大は可愛い丸っこい姿の妖怪として描いたが、これは恐らくは御大が「赤ん坊」という情報と木霊なオゴメの性質を可愛く描いたものだと思われる。
他の古い書などではオゴメは正体が鳥となっている。それは別名「ウグメ」とも呼ばれていたのだとか。
さて「ウグメ」という名前で、なんとなぁく姑獲鳥を連想した人もいるかもしれない。
実は、このウグメも姑獲鳥(産女)と同類のものであるとする説もあるようで、無関係ではないようなのだ。
特に「赤ん坊のような声」という部分が、姑獲鳥の抱く赤ちゃんや、死産してしまった妊婦なども連想させる。
姑獲鳥が「うぶめ」と読むようになったのは中国の神聖な鳥「姑獲鳥(こかくちょう)」が、子供を攫ったりするという性質を持っていたことから、いつの時代からか死産してしまった妊婦や殺された妊婦の妖怪である産女と混同され、確信犯で革新派の鳥山石燕により「姑獲鳥(うぶめ)」として描かれる事でもはやそういう妖怪として新生した。
じゃあ鳥としての性質は中国にしかないのか? というとそうではないようで、まさにここで紹介している「オゴメ」が「ウグメ」であったりしたことから、もっと複雑な経緯で姑獲鳥は形成されているであろうことが窺える。
姑獲鳥と関係してくるということは、このオゴメもまた、ただの可愛い赤ちゃん声の妖怪ではいられないかも知れない。
例えば間引きなどによる子供を埋める習慣だったり、妊婦が殺されたり、実際にそういうことがあったのかはわからないが、何かしら暗い歴史があって「赤ちゃんのような声で笑う妖怪」になっているはずなのだ。
どんなに可愛い妖怪にも、そうなっただけの暗部があることは忘れてはならないだろう。