隻眼が討つ!――大入道(おおにゅうどう)
大入道
かの戦国武将、伊達政宗には、妖怪と戦ったエピソードがある。
しかも相手は大入道。入道系の中でも一際「そのまんま」な名前の大御所妖怪である。
仙台城下、荒巻伊勢堂山の坂道に、夜になるとものすごい轟音を起ててうなる大岩があった。その評判のせいでその道は夜になると人は全く通らない道になってしまったのだとか。
しばらくの後、その大岩が、天にも届く程の巨大な大入道に化け、われ鐘のような音を起てるという噂が、仙台藩主伊達政宗の耳に届いた。
早速政宗はその噂の真相を確かめるべく配下に現地調査に行かせると、翌日真っ青になって「大入道現る」との報を持って戻ってきた。
豪胆な政宗は、されば打倒さんと自ら強弓を持って現地へと赴いた。
日没後、噂通り大きな唸り声をあげながら政宗の倍ほどもある大入道が現れた。
政宗は全く動じず、落ち着いて弓に白羽の矢をつがえ、大入道の足元を射抜いた。
暗闇をつんざくほどの叫び声が響き、大入道の姿はすっと消えて元の巨大な岩へと戻ったが、射たはずの白羽の矢が見当たらない。
辺りを探すと、大岩の隙間から何やら呻き声が聞こえる。
政宗はそこを覗いてみると、なんと仔牛ほどの大きさもある大川獺が足に矢が突き刺さった状態で倒れていた。
政宗は正体を見極めたことに満足し、大川獺をひっ捕らえてゆうゆうと帰路についたのだという。
――さて、一つだけどうしてもツッこんでおきたい部分がある。
大入道、小さくないか?
噂の段階では「天にも届くほど」だったのに、政宗と対峙したのは「政宗の倍ぐらいある」である。
しかも、政宗は慎重が160センチぐらいだったというデータがある。
としたら大入道もそこまでデカクもないじゃないか。というかこういう話は盛りに盛られて出来上がるのが常だから、普通に背の高い大男ぐらいなもんだったんじゃないだろうか。
まぁ、色んな逸話が混ざった創作譚である可能性はものすごく高いから、あんまり真面目なつっこみするのも野暮なんだけど、そこだけは気になってしまったので。