キャベツって10回言ってみて? ……じゃあこの妖怪は?
キャツ
兵庫県姫路市に面する海上によく出たとされるのが、怪火「キャツ」である。
キャベツとは何の関係も無い。念のため。
それは難破した船で死んでいった船員達の亡霊だと言い、暗い夜などにぼうっと海上を彷徨うのだという。
船乗り達はキャツに会うと船の火を灯す。すると、不思議とキャツは消えてしまうのだという。
また、キャツは怪火としてだけでなく、亡霊船のように帆を上げて進んで来たりもするらしい。
さて姫路市は瀬戸内海に面している。
この辺りでは夏になると特有の凪(なぎ)が発生し、風の無い無風状態が長く続き物凄い暑さになるのだとか。
無風状態の海上での怪火や亡霊船。これはもうとんでもなく怖いだろう。
また逆に、特有の凪がそのような怪異のきっかけになっているとも考えられる。
とにかく、忌々しい海上の怪現象を、船乗り達は憎しみを込めてキャツ(彼奴)と呼んだのだろう。
突然だが、難破して散って行った多くの戦士達の武勇伝ならぬナンパして散って行った戦士の話をする。
彼奴は学生だった。彼奴は一度もナンパなどしたことが無かった。
初めて友達とナンパしてみようぜ、ということになり、彼奴とその友人は勇んで少しひらけた町へと向かった。
彼奴は移動中の電車内で、とてもかわいい女の子を見かけた。
彼奴はとにかく緊張していた。ナンパなんてしたくなかった。
でも、彼奴は果敢に挑んだ。
電車を降りてすぐ、彼奴はその女の子に声を掛けた。
「ずっと好きでした! 付き合って下さい!」
彼奴は何故か、初対面なのにそのように言った。影から友人は笑って見ていた。
女の子がドン引きしていると、すぐに待ち合わせていたらしい女の子の彼氏がやってきて、「誰だよ」と彼奴に言った。彼奴はすぐに逃げた。一目散に逃げ、顔を真っ赤にし、笑っている友人も無視して遠くへと逃げた。
そして彼奴は、二度とナンパなどということをしなくなった。というかそれは告白と言った方が良いものだったわけだけれど。
そんなほろ苦い思い出。彼奴は僕。