そうだ髪を切ろう! 坊主狸(ぼうずだぬき)
坊主狸(ぼうずだぬき)
前髪が気になる。
僕はとにかく前髪が鬱陶しいかどうかのみで髪を切るかを決めるズボラなので、前髪がチラつき始めたこの頃はまさに切り時なのである。
さて髪を切ってもらうには毎回妖怪にお世話になっているわけだが(という妄想セルフカット)、黒髪切り、髪切りあたりにはもう切ってもらいすぎて申し訳ないので、年末の旅行がてら今回はタヌキさんの本場、四国は徳島県美馬郡半田町で坊主狸に切ってもらうことにする。
この坊主狸さんは「坊主橋」という実に解りやすい名前の橋付近に出没する。
夜、その橋の周辺をうろうろしていると、いつの間にか坊主頭にされてしまうのだという。
髪型を選べないのは残念だが、とりあえず無料で髪を切ってもらえるので助かる。
この坊主狸という妖怪、元は坊主橋近くの神宮寺から出てくる坊主が多く往来してたからこの名前が付いた、という説もある一方で、上記のように夜に狸に坊主にされるから、という説の二通りがある。
なるほどどっちも坊主だからどちらのパターンでもいいわけだが、その近辺の伝承では「髪を狸に坊主にされた」なんてものはないらしい。
どこかの誰かが勝手に狸の妖怪に仕立て上げてしまった可能性濃厚である。
しかしまぁ四国、特に徳島ではとにかく狸様の力が偉大なので、妖怪についてある程度知識があると、徳島、と聞いただけで「はいはいまたタヌキでしょ」と思っちゃったりするほど。
坊主橋の由来についてあれこれ思案した誰かがそのような話を作り上げたとしても不思議ではない。
で。こういう事からもわかるように、タヌキというのは本当に「なんでもあり」なヤツで、どんな妖怪・怪異もやってのけるのだから凄い。というか、タヌキのせいにして収まらないものなんて無いのである。
キツネもそういう特性はあるが、なんとなくタヌキほどではないイメージ。
容姿からのユーモラスな雰囲気がいい方向に働いているのだろう。
僕の現実を見ると、髪を切る余裕もなく、休日ゼロで年末まで駆け抜ける過酷な状況。
何かがおかしい。
絶対、タヌキに化かされているに違いない。