薬缶吊るfeat.茶袋
薬缶吊る
長野県では、ある決まった木によく薬缶がビヨ~ンと下がってくるという怪が起きた。
これが、妖怪薬缶吊るである。
中国の書記『捜神記』にその由来はあるのでは? とも言われているが、ヤカンをぶら下げるだけの簡単なお仕事なので元は誰かの悪戯から起こった怪の可能性も捨てきれない。
そもそもヤカンは薬などを煮だす時に使っていた物で、故に薬缶とも書くのだが、だからと言って薬缶吊るに遭遇すると病気が治る――というような事は起きず、むしろ逆か、または何も起きないのだという。
他にも、咽の乾きをアピールすると現れ、甘い水を飲ませてくれるともいう。優しい。
ぶら下がり運動系妖怪は結構いるが、薬缶吊ると関係していそうなのが茶袋という高知県に出る妖怪。
これもまたただ茶色い袋が木からぶら下がるだけの妖怪なのだが、わざわざ色指定をしているのが気になる。
更に更に、以前紹介した馬の首が下がるというさがり。
馬といえば茶色だし、徳川吉宗所有の馬でも無い限り白馬なんてその時代にはいない。
となると逆の予測で薬缶吊るもまた茶色い薬缶だったのではないか? と考えられる。
そうなのだ。きっと、正体は全て同じなのだ。
茶色で、夜に、木の枝にぶら下がるナニカ……。
害も無く、特に何かするわけでもない……。
甘い水をくれる……甘いなごり……愛の甘いなごり……
茶色で……暗闇にしげる……暗闇のしげる……
やはりあなたでしたか。
皆様もちょっと考えてみて欲しい。妖怪はあなたの心の中に。