あれ? タカシ君は? ~隠れ婆~
隠れ婆(かくればばあ)
夕方のかくれんぼ。
一人だけ、どうしても見つからない子供がいる。
一人の子供が顔を青くして、「隠れ婆にやられたんだ……」と言う。
結局その子供は見つからず、そればかりか決して戻ることは無かった。
兵庫県に伝わる隠れ婆は神隠しの一種とも言われている妖怪である。
隠れ婆は路地で待ち構えているといい、子供達が夕方にかくらんぼを始めるのを見計らい、その内の一人を跡形も無く攫うのだという。
神隠しは、恐ろしいことに現代でもまだ使われることのある言葉でもある。
そういう意味では、未だ解明されていない、または永遠に解明されることの無い現象のような気もする。
事実去年の行方不明の子供の数は四千人を超えるという。
減るばかりか、増えているのである。
本当に原因が判らない場合、とりあえず納得する為に妖怪は機能する。
自分の子供が見知らぬ誰かにさらわれ、恐ろしい目に遭っているかも知れないという現実と、妖怪にさらわれたのだ、という少し考えにくい状況。そのどちらかを受け入れなければならないとしたら……
救いのあるのは妖怪である。
決して理解したくない、認めたくない現実にぶち当たった時、ほんの僅かでも心を軽くしてくれる。そういう効能も妖怪にはある。
真に救われる事は無いとしても。