妖怪うぃき的妖怪図鑑

妖怪うぃきから産まれた妖怪図鑑ブログ。妖怪の原点に触れ、もっと魑魅魍魎を知るきっかけになれば幸いです。

児啼爺(こなきじじい)

児啼爺(こなきじじい)

これまた鬼太郎のお陰で随分と知名度の高い妖怪であるが、その発祥となる伝承は意外とはっきりしていない。
 
というのも、児啼爺発祥の地とされる徳島県には具体的に伝わる民間伝承というものは存在せず、あくまでも「伝説を収集した書物」に記載があるのみだからである。
柳田國男も、『妖怪談義』において
「阿波の山中にいるという怪で、形は爺だが赤ん坊の泣き声を出す。あるいは赤ん坊の姿に化けて山中で泣いているともいうのはどうやらこしらえ話(作り話)らしい)」
と書いていて、作られた妖怪なのではないかとしている。
 
子泣き爺創作説で決定的なのは、徳島県山間部に伝わっていたのは「子泣き爺」ではなく、「オギャナキ」という怪異だったということ。これは地元の人々が言ったものであり、それによれば鳥が正体だとされる「オギャナキ」という怪異は、まるで赤ん坊のような声で啼くのだとか。
それが子泣き爺に変わる過程で、オギャナキという言葉の響きとコナキという言葉の響きが似ているから――という事も充分考えられると思う。
 
他にも産女等と似ていることや、おぶさり系妖怪の特性も混ざり、なんかもう色んな憶測の飛び交う妖怪になった。
しかし妖怪研究家の間では「コナキジジイという妖怪はいなかった」という意見で一致している。
 
――が、それを実に巧く利用したのがご存知鬼太郎の子泣き爺であり、公式設定ではしっかりと徳島県の妖怪とした上で、赤ん坊のように泣いて重くなり敵を押し潰したり、硬化能力で戦ったり、杖で無双したり、赤ん坊に化けたりと、とにかくごっちゃに伝わる伝承を利用しまくって大活躍しているのである。
 
本当はそんな妖怪いなかった――という説が濃厚でも、しっかりとした妖怪像を人々に持たせて愛され続けている妖怪になったということを考えると、いかにゲゲゲの鬼太郎が妖怪界に大きな影響を与えたかが解るのである。