禁じられた呪いの妖怪「蠱魅(こみ)」
可拉可拉画「蟲魅」
蠱魅は様々な怨念が虫となり、更に鬼と化した妖怪である。
古代中国で広く使われていた呪術の一つである「蠱毒(こどく)」。日本にも渡ってきており、何度も禁止される程に恐れられた呪術であり、犬を使った犬神のように、蠱毒は虫を使った呪術である。
(犬神などの動物を用いる呪術全般を蠱毒と呼ぶ場合もある)
――そんな蠱毒が現代でも密かに使われている地域があるのだが、簡単に使っていいわけがない蠱毒はしばし危険な暴走をすることになる。
この妖怪「蠱魅」は、そんな暴走した蠱毒の、特に何かを使役しようと試みた際の失敗の成れの果てと言われている。
制御できなくなったその「呪い」は、見境なく人々に憑りつき、頭の中に侵入してはその生気を喰らう。
性質が悪いのは蠱魅が頭に侵入した際に伴う「快感」であり、それは人を容易に中毒にする。
自らの生気が奪われ、日々身体に異変をきたすようになってもまだ、憑かれた者は蠱魅を求めるようになる。
そして身も心もボロボロになり、もう死すらすぐそこ、という段階になると、蠱魅はフッといなくなってしまう。
残るのは強烈な中毒と、ボロボロになった自分だけ。
蠱魅に憑かれた者の多くが死んでしまう、と伝わっているのは、蠱魅自体が人を殺すのではなく、最後はその強烈な中毒の副作用により発狂するか、耐え切れずに自ら命を絶ってしまうからである。
――人を呪わば穴二つ。
しかし呪いそのものが形を成した蠱魅の前では、穴(墓)はいくつあっても足りない。
妖怪画提供元:可拉可拉様より「蟲魅」