姑獲鳥と産女と卜部季武
『和漢百物語』より「主馬介ト部季武」
酒呑童子討伐や土蜘蛛退治で有名な源頼光四天王のひとり、卜部季武。
うらべのすえたけ、という読みはテストに出るので覚えて欲しい。前も書いたが、戸次鑑連(べつきあきつら)級の読めない名前である。因みに戸次鑑連は別名「立花道雪」。戦国時代に大友家に仕えていた者である。一応。
さてこの卜部さんと姑獲鳥が描かれたこの絵。この一幕は『今昔物語』に書かれている逸話。
卜部さんが歩いていると、夜な夜な現れると言われていた姑獲鳥とばったり遭遇。
姑獲鳥は抱いている子供を卜部さんに抱いてほしいとお願いし、仕方なく願いを聞いて子供を預かり、そのまま帰宅するとその子供はいつの間にか木の葉に変わっていた――というもの。
尚、画中解説文には「産女」としてこの妖怪が書かれている。んが、ぱっと見では気付かないと思うが、描かれている産女には羽が生えており、解説文でもしっかりと「羽の生えた――」と書いてある。
この辺りのややこしさは是非姑獲鳥の紹介ページを見てほしいのだが、元から日本にいた産女と、中国の神聖な鳥である姑獲鳥(こかくちょう)がいつのまにか同じ妖怪になってしまった現象を垣間見ることができる。
産女なのに羽があるのは間違いなく姑獲鳥と混ざってしまっているからであり、『今昔物語』が書かれた平安時代頃にはもう産女と姑獲鳥の同一視現象は起きていたのではないか? と考えることができる。
ただ、解説文を書いた者が付け加えたのだとしたら話は変わってくるが。
というか姑獲鳥のややこしさを真に知りたければ京極先生の『姑獲鳥の夏』を読めばよろしい。
ところで、頼光四天王の中でもこの卜部さんは影が薄い勝手な僕のイメージがあったのだが、この解説文に拠れば「万夫不同の英傑なり」とのこと。
まだまだ卜部さんへの理解が足りないようで申し訳ない。
尚、最後に書くことではないのだろうが、この芳年の絵のタイトル、「主馬介ト部季武」の読みは「しゅめのすけうらべのすえたけ」である。
これもテストに出ます。