異獣(いじゅう)
『北越雪譜』より「異獣」
異獣は、北越雪譜に出てくる全身毛だらけの可愛い妖怪である。
北越雪譜による物語はざっと以下の通り↓
越後の国のとある問屋でのこと。
ある夏、突然大きな荷物を遠方まで届けることになり、運搬役に竹助という男が選ばれた。
30キロ近い道中、疲れた竹助が山中の道端で休んでいると、ふいに茂みから毛むくじゃらの大きなサルのような化物が現れた。
最初は驚き化物の様子を窺っていた竹助だったが、どうやら化物は竹助の持つ弁当を欲しそうにしている。
ドラクエ風に言うならば、
「魔物は竹助の弁当を羨ましそうにじっと見ている。あげますか?」
→はい
いいえ
だ。どうでもいいんだが。
竹助が弁当をあげると、化物は嬉しそうに弁当を平らげた。
「チキショー弁当は食われちまったが、なんだか可愛いヤツ。んじゃあ達者でな!」
と、竹助は帰ろうとしたが、なんと化物が荷物を背負って山を抜けるまで先導してくれたのだ。
山を抜けると化物は荷物を降ろし、まるで疾風の如く山の方へ帰っていったのだという。
ーーなんと優しい化物語。
異獣なんていう怖い名前がついているが、じつはただの心やさしき妖怪なのだ。
名前で損をしている珍しい妖怪「異獣」に幸あれ!