燈無蕎麦(あかりなしそば)
歌川国輝『本所七不思議之内』より「無灯蕎麦」
本所七不思議のひとつ、燈無蕎麦。
本所の辺りで、夜中に腹が減ったので街を歩いていると、行燈に火を灯さずにいる蕎麦屋が一件だけあった。
不審に思い近づいてみると、店内は温かく、お湯も沸いていて蕎麦の香りもする。なのに誰もおらず、灯がともっていない。
親切心から火を点けてあげたのだが、どこからともなく風が入り込み、すぐに灯りは消えてしまう。何度も何度も火を灯しても、やはり消えてしまう。
不気味になって帰ると、しばらくの間は凶事が続いたのだと言う。
これがこの怪異のおおまかな概要。
このエピソードには真逆のものも存在し、そちらは「消えずの行燈」という名前で有名。消えずの、の方は誰も油を注いでいないのに延々と消えることの無い行燈のある店があり、そのバージョンも最終的には不幸に見舞われる、というもの。
この怪異が何を暗示しているものなのか、謎である。
一件だけ世間の流れに逆らい明かりを灯さない……まさかエコの先駆け!?
尚、この怪異の正体はタヌキやらキツネやらと様々に噂されるが、↑の絵を描いた歌川国輝はタヌキとしたようだ。
真っ黒狸におったまげる女性のリアクションがなんとも面白い。
二八そばの二八の字の上に尻尾が垂れ下がっており、二八の字がなんだか違う漢字にも見える。これはまさか……
ワカンネ。