山あらし(やまあらし)
『百鬼夜行絵巻』(松井文庫所蔵版)より「山あらし」
山あらしは、百鬼夜行絵巻に描かれている威圧的で恐ろしい顔のトゲトゲ妖怪。
実在の動物であるヤマアラシを妖怪として描いたものとも言われている。
唇は真っ赤で刺々しい身体とは裏腹に色気を感じる。感じて。
あちらもヤマアラシをベースにはしているものの、おろし金と、さらには松井文庫版でない百鬼夜行絵巻に描かれている妖怪の姿を元にしており、この「山あらし」との関連性はあまりない。
さて、実在の動物ヤマアラシだが、トゲトゲ系動物としては少し異なる性質を持っている。
それは、身を守る為に使うだけでなく、かなりアグレッシブにトゲで攻撃してくるらしいのだ。
ただカワイイのは針が生えているのは背中部分であるため、攻撃する際は後ろ向きで突進する。萌えた。
時には肉食獣に食われてもトゲをぶっさして殺してしまうなどの漫画的荒業もするらしい。
そんな恐ろしいヤマアラシが、日本で妖怪のようなものと想像されても不思議ではないだろう。
因みに、トゲがあるせいで寄り添いたいのに寄り添えない「ヤマアラシのジレンマ」という言葉があるが、実際のヤマアラシカップルはトゲの無い頭部をくっつけて寄り添うので問題無い。
トゲのある女性も、やりようによっては上手く付き合っていくことができる――という人間の事例とも同じである。
我慢か、それともヤマアラシのようなお互いの歩み寄りか。
時には動物や、妖怪から何かを学ぶことだってあるかも知れないのだ。