狸囃子(たぬきばやし)
歌川国輝『本所七不思議之内』より「狸囃子」
さぁみなさんご一緒に!
♪証 証 証城寺
証城寺の庭は
ツ ツ 月夜だ
みんな出て 来い来い来い♪
おい等の友達ァ
ぽんぽこ ぽんの ぽん!
負けるな 負けるな
和尚さんに 負けるな
来い 来い 来い
来い 来い 来い
みんな出て 来い来い来い♪
証 証 証城寺
証城寺の萩は
ツ ツ 月夜に 花盛り
おい等は浮かれて
ぽんぽこ ぽんの ぽん!
――全歌詞覚えている方は少ないだろうが、ある程度の年齢の方であればばあちゃんなどから教わったりして覚えているであろう「證誠寺の狸囃子」である。
知らない平成生まれは勉強してコイヤァ!!
狸囃子はタヌキが起こす怪異の中でも特に有名で、かつ害が無い。
大体の伝承では、どこからともなく聞こえてきた狸囃子に聞き入り、音のする方へ行ってみたがいつになっても音の発生源にたどり着けず、気付けば全く知らない場所で迷子になってしまった――というパターンである。
どの伝承にも共通するのが、タヌキの仕業だろうとはされているものの、音を追いかけて実際に狸を見た者はいないということ。
↑の歌川国輝の絵には狸が描かれているが、まぁそれは置いといて。
――さてここからは僕も大嫌いな「科学的考察」をしてしまうが、どうやら狸囃子の正体は遠くの街等で行われていた祭りなどの音が、風に乗ったり山に反射したりして聞こえてくるものとの説が有力である。
故に追いかければ迷子にもなるし、当然狸さんもいない。
ただ、過去に数回ぐらいは、迷子になった先でたまたまタヌキに遭遇し、
「うへぇ! こんりゃタヌキの仕業に違いねぇっぺ!」
と言い出す者が現れ、それが今日までに定着してしまったと考えても不思議ではない。
あるいは、お囃子の小気味よい太鼓の音が狸の腹鼓を連想させたからかも知れない。だから狐囃子にはならずに狸になった――とか。
なんにしろ、狸囃子の持つイメージは、不気味だけど害が無く、なんとなくユーモラスで想像力も凄く掻き立てられるという意味で、怪異としてかなり質の良い怪異(!?)なんじゃないかと思う。
全く関係無いが、タヌキが麻雀したら間違いなく「鳴きダヌキ」だな、なんて思った。
狸「ぽん!」