妖怪うぃき的妖怪図鑑

妖怪うぃきから産まれた妖怪図鑑ブログ。妖怪の原点に触れ、もっと魑魅魍魎を知るきっかけになれば幸いです。

二十四考狐火之図

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『新形三十六怪撰』より「二十四考狐火之図」
 
この絵は、「本朝廿四考(ほんちょうにじゅっしこう)」という浄瑠璃、及び歌舞伎の演目のワンシーン。
 
舞台は戦国時代。武田信玄の息子、武田勝頼と、上杉謙信の娘、八重垣姫との恋の物語である。尚、舞台用に脚色されており、史実とはかなり違うのでそこらへんは要注意。
 
ではあらすじを簡単にーー
 
武田信玄の息子、武田勝頼は、幼くして違う子供とすり替えられてしまう。
そのすり替わった子供は蓑作という名で、ニセ勝頼として武田家にて生活することに。しかしある失態をした際に切腹させられてしまう可哀想なニセ勝頼。
 
一方、本物の勝頼は蓑作として生きていて、どういう運命か、敵対していた上杉家にて働くことになってしまっていた。
 
しかしそこに本物勝頼の秘密を知る腰元、濡衣が登場。(濡衣、は名前です)
なぜ秘密を知っているのかと言えば、濡衣は切腹させられたニセ勝頼(本物の蓑作)の恋人だったから。
 
さらに話はややこしくなり、今度は八重垣姫がやっと登場。
八重垣姫は上杉謙信の娘であり、勝頼と許嫁だった(これは不仲だった上杉、武田が仲良くする為の政略結婚)。
可愛い八重垣姫は、未だ見たこともない勝頼の絵を毎日眺め、結婚生活に想いを馳せるぶっとび夢見るガールだったが、勝頼が切腹したことを知り、涙に暮れる。
 
しかし自らの領内で、蓑作(に扮している本物勝頼)を見つけ、
「あぁ! まさか貴方は勝頼様!」
と気付く。
いやいや本物見たことないんじゃねぇの? なんて野暮なツッコミは無しで。
「カツヨリ? ワタシミノサクデース」
清姫に嘘をついた安珍ばりの誤魔化しをするものの、八重垣姫は諦めずに腰元の濡衣に仲を取り持つようお願いする。
 
しかし全てを知っている濡衣はなかなか紹介してくれないので、
「じゃあもう、私死ぬわ!」
と自決しようとする八重垣姫。流石に面倒になったのか、本物勝頼と八重垣姫を合わせてやることにした濡衣。
 
しかし数日後、本物勝頼は謙信に「塩尻にちょっとお使いに行ってくれないか?」と頼まれる。
実はなんと本物勝頼の正体はバレていて、この期にぶち殺そうと謙信は思ったのだ。
謙信は本物勝頼を追う刺客を差し向ける。
更に、「それは止めてよ!」と言い出す八重垣姫を「貴様も味方か!?」と取り押さえる謙信。
 
さぁ物語もクライマックス。
八重垣姫はなんとか本物勝頼に追っ手が迫っている事を知らせようと考えます。
勝頼は諏訪湖を迂回するルートを走っている筈だから、諏訪湖を縦断出来ればもしかしたら……
 
八重垣姫は舞い、そして武田一族の守り神、諏訪法性の兜に祈る。
その兜には白狐の魂が篭っており、八重垣姫は狐火によって舞いあがり、諏訪湖を歩いて渡る事ができた。
 
そして命を救われた勝頼。武田、上杉の不和問題が解決してから、八重垣姫と勝頼は結ばれたとさ。めでたしめでたし。
 
 
狐の力を借り、諏訪湖を渡ろうとしているシーンを描いたのが芳年の↑の絵。
恋する乙女は湖面すら楽々渡るのだ!