妖怪うぃき的妖怪図鑑

妖怪うぃきから産まれた妖怪図鑑ブログ。妖怪の原点に触れ、もっと魑魅魍魎を知るきっかけになれば幸いです。

四ツ谷怪談

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『新形三十六怪撰』より「四ツ谷怪談」

 

怪談として非常に有名な四ツ谷怪談。日本人なら誰でも知って……あれ? 僕も知らないやアハハ――というわけで調べつつざっとあらすじを書いてみる。

 

四ツ谷怪談は実話を元に四代目鶴屋南北が作り上げた歌舞伎狂言の一つ。

元禄時代の実際にあった事件を脚色し怪談に仕立て上げ、さらに南北がこれを作った当時江戸で起きた不気味な事件等も盛り込んで完成させたらしい。

 

因みに皿屋敷のお菊と混同される事があるようだが、皿屋敷はお皿割っちゃったお菊ちゃん、四ツ谷怪談はドロドロした男女関係の挙句毒を盛られたお岩ちゃんである。

 

あらすじ(東海道四谷怪談のもの)は――

 

伊右衛門とお岩という夫婦がいた。しかしのっけからこの夫婦には裏があった。

それは一度伊右衛門が主家の金を盗んだ事がお岩のお父さんにバレ、別れさせられたのだが、伊右衛門はお岩のお父さんを殺し、

「チキショーお岩、お前のお父様を殺した野郎に一緒に復讐しよう! だからもう一度やり直そう!」

とトンデモなウソをついてお岩と再婚した。

出だしから厭な話である。

 

ほどなくしてお岩が身籠った。これは流石にちゃんと伊右衛門の子である。

(芳年の描いた↑の絵は、多分これから始まる悲劇の直前の、子供をあやすほっこりシーン。帯が不吉な蛇の形を成しているのが面白い)

しかし――お岩と伊右衛門夫婦の家のすぐ近くに、伊藤喜兵衛という金持ちが住んでおり、喜兵衛の孫娘である「お梅」が伊右衛門に惚れてしまう。

伊右衛門のモテ期到来である。

喜兵衛はなんとかお梅と伊右衛門を結ばせたいと画策し、子供を産んだばかりのお岩の面倒を見る振りをしてお岩に顔が醜くなる毒を盛る。シドイ!

極悪喜兵衛は伊右衛門の元を尋ねると、金をちらつかせて

「お岩なんて捨てて、ワシの可愛い孫、お梅と結ばれてやってはくれんかね?」

と伊右衛門に迫る。

「いやいや何言ってんだよジジイ」

と最初は当然断った伊右衛門だったが、お岩の醜くなった顔を見て千年の恋も冷め、若く美しいお梅と結婚することを喜兵衛と約束してしまう。結局顔かよ伊右衛門さん……。

 

伊右衛門は結婚資金をねん出するために、お岩の着物や、赤ちゃん用の服までも全て質に入れて金に換えた。

さらにお岩と別れる口実を作るべく、知り合いの宅悦という人物にお岩を誘惑してくれないか、と頼む。あーもーチョーサイテー。

しかしなんとこの宅悦が、お岩に鏡を見せてしまう。それまで自分の顔の醜さに気付いていなかったお岩は驚愕する。

それまで知っていた自分の顔とは違う、崩れた顔。慌てて髪を梳いてみれば髪の毛もごっそりと抜け落ちる。

お岩は発狂し、嘆き、恐ろしい呪いの言葉を何度もつぶやきながらそのままショックで死んでしまった。

 

お岩の死を知った伊右衛門。嘆くかと思えばその逆。これ幸いと、小平という男を連れてきて殺害。小平とお岩は不倫していた、という勝手なウソ設定を作り、戸板の裏表に二人を張り付けて川へと流した。

 

そうして邪魔なお岩を消した伊右衛門はお梅と結婚するのだが――すぐにお岩の怨念が伊右衛門を襲う。

 

「うらめしや、うらめしや伊右衛門殿ぉぉぉ」

 

ある晩、伊右衛門は寝苦しさに目を覚ました。すると枕元には自分を見下ろすお岩の姿が。驚いた伊右衛門は、そのお岩の首を斬り落とす。しかし転がった首は――お梅だった。腰を抜かし、喜兵衛に助けを求めに行ったが、寝ていたのは殺したはずの小平。伊右衛門は小平の怨霊も叩き斬るのだが、我にかえるとそこには斬り殺された喜兵衛と、さらに幼い子供の姿。

どこへ逃げても、何をしていても、お岩の怨念は伊右衛門に付きまとう。

時には提灯にまで化けて出た。

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葛飾北斎『百物語』より「お岩さん」

 

そうしてすべてを失った伊右衛門だったが、決して許される事はなく、死ぬまでずっとお岩の祟りに苦しめられたのだという。

 

 

――なんとも恐い話である。

ただこればかりは伊右衛門が悪い。自業自得といったところか。

 

因みに、長くなり過ぎるかもだったので省いたが、もう数人、主要人物がおり、最後は伊右衛門はちゃんと天誅されることになっている。

四谷怪談が今も尚有名なのも納得。話の作りこみ、男女のどろどろおどろおどろ具合、怖さ、それら全てが上手く入っていた。

調べてよかつた!