貞信公夜宮中に怪を懼しむの図
『新形三十六怪撰』より「貞信公夜宮中に怪を懼しむの図」
さて、月岡芳年の『新形三十六怪撰』からも妖怪画載せるぞ! と意気込んだものの、やり始めてみれば芳年にしろ歌川国芳にしろ、人物メインの絵が多くってどのようにカテゴライズすりゃいいのか解らないので、あくまでも『新形三十六怪撰』の紹介として掲載していくことにする。
この「貞信公夜宮中に怪を懼しむの図」は、平安期の歴史物語である「大鏡」という書に描かれている、藤原忠平(貞信公)の逸話を芳年が描いたもの。
藤原忠平は、菅原道真とも仲の良かった人物であり、宇多上皇の側近集団としても腕を振るった(忠平の兄、時平は、道真を嵌めて流罪に持ち込んだ人物であったりと、この時代の政治絡みの関係は色々ややこしい)。
そんな忠平の鬼をも恐れぬ勇ましい逸話がこの絵である。
貞信公は、夜半突然現れた物の怪(鬼)にひるむことなく、むしろ威嚇して追っ払った。
描かれている貞信公の威嚇する顔がなんとも渋くてかっこいい。
余談だが、醍醐天皇の時代のこんなエピソードがある。
ある日醍醐天皇は宮中に占い師を呼んで、時平(後に道真嵌めた人で忠平の兄ちゃん)、道真、忠平の人相を占わせた。
時平は「知恵が多過ぎてキケン!」と言われ、道真は「才能有り過ぎワロエナイ」と言われ、忠平は「全部イイ! 最高! ずっと尽くして働いてくれるのはコイツ!」
と評されたという。
人相占いって凄い当たるんだな……。
尚、芳年は同じ題目を『新形三十六怪撰』の前にも『和漢百物語』で描いている。
『和漢百物語』より「貞信公」