小袖の手(こそでのて)
『今昔百鬼拾遺』より「小袖の手」
唐詩に、昨日施憎裙帯上断腸猶繫琵琶功絃とは妓女の亡ぬるをいためる詩にして、僧に供養せしうかれめの帯になを琵琶の糸のかゝりてありしを見て、腸をたちてかなしめる心也
すべて女ははかなき衣服調度に心をとゞめて、なき跡の小袖より手の出しをまのあたり見し人ありと云
小袖の手は、死んだ女性が生前着ていた着物より、にゅるりと手が飛び出した妖怪(怪異)である。
石燕の解説文には「すべて女ははかなき衣服調度に心をとゞめて、なき跡の小袖より手の出しをまのあたり見し人ありと云」
とあり、女性の身に着けているものには魂が宿りやすいことと、女性が死んだ後もその衣服より手が出るのを目撃する人が多いことを書いている。
見間違いも含めてだが、現代でもそのような事例が起きることはある。
僕が実家にいた頃、婆ちゃんが大切にしていた浴衣から白い手が伸び、驚愕した経験がある。
まぁ……猫だったんですが。
あと……婆ちゃん生きてるんですが。
因みに『狂歌百物語』にも「小袖手」という名の妖怪が描かれている。
こちらは手の出る着物も化け物じみた模様をしており、より不気味な絵になっている。
『狂歌百物語』より「小袖手」