魃(ひでりがみ)
『今昔画図続百鬼』より「魃」
一名を旱母といふ
もろこし剛山にすめり
その状、人面にして獣身なり
手一つ足一つにして走る事、風の如し
凡此神出る時は旱して雨ふる事なし
魃は剛山という山に住む、手足が一本ずつしかない妖怪。
魃が居る場所は雨が降らないとも言われ、日照り神とも言われる。
この妖怪のルーツは中国の「魃(ばつ)」という女神であった。
魃は凄まじい熱を持ち、雨すら止ませてしまう力を持った女神で、ある戦の時に力を使い切り、天へと帰れなくなってしまった。黄帝は弱り、やむなく魃を山に幽閉した。
ーーこれが妖怪「魃」のルーツであり、元の中国での「魃」や、様々な伝承を合わせて石燕が描いたのがこの「魃(ひでりがみ)」である。
中国での美女神が日本に渡って化け物化するのはよくある話です。
因みに、現代で使う「干ばつ」という言葉は、元は「旱魃」と書く。これはもちろんこの魃が関係しているが、旱魃という漢字が常用漢字じゃない為現在の「干ばつ」が一般的になったらしい。
道理で干ばつのばつがひらがなな訳だ。