妖怪うぃき的妖怪図鑑

妖怪うぃきから産まれた妖怪図鑑ブログ。妖怪の原点に触れ、もっと魑魅魍魎を知るきっかけになれば幸いです。

『新形三十六怪撰』

二十四考狐火之図

『新形三十六怪撰』より「二十四考狐火之図」 この絵は、「本朝廿四考(ほんちょうにじゅっしこう)」という浄瑠璃、及び歌舞伎の演目のワンシーン。 舞台は戦国時代。武田信玄の息子、武田勝頼と、上杉謙信の娘、八重垣姫との恋の物語である。尚、舞台用に脚…

四ツ谷怪談

『新形三十六怪撰』より「四ツ谷怪談」 怪談として非常に有名な四ツ谷怪談。日本人なら誰でも知って……あれ? 僕も知らないやアハハ――というわけで調べつつざっとあらすじを書いてみる。 四ツ谷怪談は実話を元に四代目鶴屋南北が作り上げた歌舞伎狂言の一つ。…

やとるへき水も氷にとちられて 今宵の月はさらにこそあり 宗祇

『新形三十六怪撰』より「やとるへき水も氷にとちられて 今宵の月はさらにこそあり 宗祇」 宗祇とは室町時代の超有名だった連歌師である。 連歌師であると同時に大の旅好きでも知られ、よく弟子を連れて旅をした。 この芳年の描いた絵も、旅の道中に起きた怪…

秋風のふくにつけてもあなめあなめをのこはいはしすゝき生けり

『新形三十六怪撰』より「秋風のふくにつけてもあなめあなめをのこはいはしすゝき生けり」 この怪異はご存知小野小町の悲しい最後を匂わせる、在原業平(ありわらのなりひら)を中心に据えた伝説の一つを描いたもの。 業平という人物は、平安時代の歌人であ…

節婦の霊滝に掛る図

『新形三十六怪撰』より「節婦の霊滝に掛る図」 この絵は有名な浄瑠璃の「箱根霊験躄仇討(はこねれいげんいざりのあだうち)」のクライマックスを描いたもの。 ざっとあらすじ書きます。 あるところに、勝五郎という父親を殺された不幸な男がいた。勝五郎はな…

小早川隆景彦山ノ天狗問答之図

『新形三十六怪撰』より「小早川隆景彦山ノ天狗問答之図」 戦国通なら言わずもがなだとは思うが、知らない方の為に―― 小早川隆景は、毛利元就の三男である。「なんで名字が毛利じゃないのさ」と思ったあなたは戦国時代のややこしいお家関係を勉強してらっし…

大物之浦二霊平知盛海上に出現之図

大物之浦二霊平知盛海上に出現之図 平清盛の四男である平知盛が、大物の浦にて亡霊となり義経や弁慶の前に立ちはだかっているこの絵。 すごく渋くてかっこいいので、僕はこの『新形三十六怪撰』の中でもかなり好きな絵。 そして、平知盛という人物がどういう…

為朝の武威痘鬼神を退く図

『新形三十六怪撰』より「為朝の武威痘鬼神を退く図」 こちらは曲亭馬琴(きょくていばきん)作の伝記物語『椿説弓張月(ちんせつゆみはりづき)』におけるワンシーンを芳年が描いたもの。 為朝とは源為朝のこと。平安時代は源姓ばかりでしずかちゃん祭り状…

ほたむとうろう

『新形三十六怪撰』より「ほたむとうろう」「ほたむとうろう」は、「牡丹灯籠」のこと。中国に伝わっていた物語を、落語家三遊亭円朝が手を加えてオリジナルな怪談演目へと作り変えた。さて、円朝の落語の演目、特に人情物では泣いちゃうこともあるほどだっ…

蘭丸蘇鉄之怪ヲ見ル図

『新形三十六怪撰』より「蘭丸蘇鉄之怪ヲ見ル図」 この絵は、大阪府妙国寺に現在もある「大蘇鉄」(だいそてつ。蘇鉄とは、ヤシのような見た目の木)に纏わるエピソードを描いたもの。 戦国時代、時の権力者であった織田信長は、有名であった妙国寺の「大蘇鉄…

藤原秀郷龍宮城蜈蚣射るの図

『新形三十六怪撰』より「藤原秀郷龍宮城蜈蚣射るの図」 藤原秀郷(ふじわらのひでさと)は平安時代の武将であり、弓の名手だった。 秀郷は後年になって「俵藤太(たわらのとうた)」と呼ばれるようになり、物語としても語り継がれるようになる。 その物語の…

清盛福原に数百の人頭を見るの図

『新形三十六怪撰』より「清盛福原に数百の人頭を見るの図」 この絵は平清盛が福原にて出会ったと『平家物語』に書かれている髑髏を描いたもの。 石燕が「目競(めくらべ)」と題して描いたものと同じ。 しかし芳年は妖怪としてではなく、錯覚として描いてい…

小町桜の精

『新形三十六怪撰』より「小町桜の精」 芳年は『新形三十六怪撰』で歌舞伎や演目のワンシーンを描いているものが多く、この小町桜の精もまた歌舞伎の演目である通称「関の扉」のから。 雪の中に佇む一本の小町桜――というのがなんとも美しいシチュエーション…

布引滝悪源太義平霊討難波次郎

『新形三十六怪撰』より「布引滝悪源太義平霊討難波」黒雲より出でし鎌倉悪源太、難波経房へ約束通りの逆襲!という図である。この鎌倉悪源太という異名で呼ばれたのは、ご存知源頼朝のお兄さん。非常に勇ましい人物であったようで、強い、たくましいという…

地獄太夫悟道の図

『新形三十六怪撰』より「地獄太夫悟道の図」地獄太夫とは、地獄の太夫ではなく、名前を自ら「地獄」と名乗った遊女なのである。なぜ「地獄」などと名乗ったのかと言うとーーある少女が山中で賊に攫われてしまった。しかしその少女が物凄く美しかったため、…

仁田忠常洞中に奇異を見る図

『新形三十六怪撰』より「仁田忠常洞中に奇異を見る図」 これが藤岡弘探検隊の始まりである! ――なんて冗談はさておき、この絵は仁田忠常が源頼家に命じられて富士山噴火によってできた溶岩窟である「人穴(ひとあな)」を探検をした際の絵である。 源頼家は…

清玄の霊桜姫を慕ふの図

『新形三十六怪撰』より「清玄の霊桜姫を慕ふの図」なんのことはない、清玄の霊が桜姫に未練たらたらでシミみたいに出てきてしまった図である。ーーなんて書いても元ネタを知らなければサッパリなので、頑張って書く。まず、この絵は有名な歌舞伎の演目であ…

鬼若丸池中に鯉魚を窺ふ図

『新形三十六怪撰』より「鬼若丸池中に鯉魚を窺ふ図」超巨大鯉を狙う幼い武蔵坊弁慶、通称「鬼若丸」。ためらいのなさそうな表情と、右手に忍ばせた短剣?を構えるさまはなんともかっこいい。弁慶と言えば、牛若丸(後の源義経)と橋で対決し、その後は牛若丸…

大森彦七道に怪異に逢ふ図

『新形三十六怪撰』より「大森彦七道に怪異に逢ふ図」優しいおっさんが美女を濡れないように川を渡っている図ーーとパッと見では思うかも知れないが、実はこのおっさん、ピンチの真っ只中である。川の水面を見ると、美女の影に角が生えているのがわかる。そ…

鍾馗(しょうき)

『新形三十六怪撰』より「鍾馗夢中捉鬼之図」鍾馗は中国の民間伝承に出てくる神様で、日本では疱瘡(天然痘のこと)除けの神様として縁起のいい神様とされてきた。芳年が描いたのは、鍾馗に纏わる有名なエピソードのワンシーン。中国の皇帝が病に伏せり、悪夢…

月岡芳年渾身の狂気に満ちた仁王像投げの図の謎

『新形三十六怪撰』より「蒲生貞秀臣土岐元貞甲州猪鼻山魔王投倒図」 この絵は、芳年作品の中でも特に狂気に満ちていると名高い一枚。 確かにタイトルも、絵も、色使いも、どこか常軌を逸したものになっている。 精神異常を再発する兆候が現れている絵だとも…

さぎむすめ

『新形三十六怪撰』より「さぎむすめ」 さぎむすめは、舞踊の演目である「鷺娘」を描いたもの。 白と黒のコントラストが映える美しい絵である。 文字通り、鷺が娘と化して舞い踊るシーンであり、現在にも受け継がれている鷺娘は二代目菊之丞が踊ったものだと…

貞信公夜宮中に怪を懼しむの図

『新形三十六怪撰』より「貞信公夜宮中に怪を懼しむの図」 さて、月岡芳年の『新形三十六怪撰』からも妖怪画載せるぞ! と意気込んだものの、やり始めてみれば芳年にしろ歌川国芳にしろ、人物メインの絵が多くってどのようにカテゴライズすりゃいいのか解ら…

おもゐつゝら

『新形三十六怪撰』より「おもゐつゝら」 おもゐつゝらは、舌切り雀の話において欲張りばぁちゃんが開けちゃった大きなつづらの事。 転げているばぁちゃんの方がむしろ妖怪みたく見えてしまうが、普通の人間である。 まさかとは思うが「舌切り雀」の話を知ら…

茨木童子(いばらきどうじ)

『新形三十六怪撰』より「老婆鬼腕を持去る図」 茨木童子は、酒呑童子の配下として有名な鬼である。 酒呑童子と意気投合した後、共に大江山を拠点に京を荒らし回った。 しかし源頼光四天王による大江山酒呑童子討伐により酒呑童子が討伐される。 そして様々…

浮世絵師・月岡芳年(つきおかよしとし)

月岡芳年(つきおかよしとし)・1839年〜1892年 月岡芳年は、歌川国芳の弟子としても有名な浮世絵師。 様々なジャンルの絵を描き、師匠の歌川国芳に負けない程の奇抜な構図での絵が最高にかっこいい。 また、別名「血まみれ芳年」とも呼ばれる程に、衝撃的でグ…

茂林寺釜(もりんじのかま)

『今昔百鬼拾遺』より「茂林寺釜」 上州茂林寺に狸あり 守霍といへる僧と化して寺に居る事七代、守霍つねに茶をたしみて茶をわかせば、たぎる事六、七日にしてやまず 人のその釜を名づけて文福と云 蓋文武火のあやまり也 文火とは縵火也 武火とは活火也 茂林…

紅葉狩(もみじがり)

『今昔百鬼拾遺』より「紅葉狩」 余五将軍惟茂、紅葉がりの時山中にて鬼女にあひし事、謡曲にも見へて皆人のしる所なれば、こゝに贅せず 紅葉狩は、紅葉という名前の女性に纏わる伝説。また、紅葉は鬼女であると言われたため、妖怪画にも描かれているのだと…

道成寺鐘(どうじょうじのかね)

『今昔百鬼拾遺』より「道成寺鐘」 眞那古の庄司が娘、道成寺にいたり、安珍がつり鐘の中にかくれ居たるをしり蛇となり、その鐘をまとふ この鐘とけて湯となるといふ 或曰道成寺のかねは今京都妙満寺にあり その銘左のごとし 紀州日高郡矢田庄天武天皇勅願所…

土蜘蛛(つちぐも)

『今昔画図続百鬼』より「土蜘蛛」 源頼光土蜘蛛を退治し給ひし事、児女のしる所也 土蜘蛛は、酒呑童子討伐でも有名な源頼光一行によって討伐された蜘蛛の妖怪。 鬼の顔に長い手足を持ち、糸を吐いて人間を搦め捕り、喰らうと言う。 『土蜘蛛草紙』を筆頭に…